「XBee Power Vanilla」の使い方は?

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先日、「XBee Power Vanilla(α版)」を発売いたしました。この商品のコンセプトは、XBeeモジュールの間欠スリープを利用して、スタンドアローンな通信モジュールの構築を実現する事です。ただ実際に使用する場合、少なくとも把握しておかなければいけない前提や、注意点が「more」以降にあります。”XBeeモジュールの電池駆動”というテーマに興味のある方は、ぜひ読み進んでみてください。

◆ 注意点1:XBeeモジュールのスリープモード設定とその時の挙動
各パラメータの詳細やXBeeモジュールへの書き込み方法は書籍(超お手軽無線モジュールXBee:CQ出版社など)や他のサイト・記事(「XBeeをはじめてみよう(シリーズ1編)」、「XBeeをはじめてみよう(ZB編)」)にお任せします。

今回動作確認を行った時は、以下の設定にしてサイクルスリープをさせていました。

◎ XBeeモジュールの設定

  • SM:4     モード4(サイクルスリープ)
  • ST:0x07D0  2秒アクティブ
  • SP:0x60   ポーリングサイクル 約1秒
  • SN:0x1E   30秒に一回、アクティブ
  • IR:0x07D8  アクティブ中のサンプリング間隔 2秒以上

大まかに、「30秒に一回、アナログ1chのデータをホストに送信(2秒間アクティブ)」という動作になります。このとき、スリープ中の28秒間は管理ソフト”X-CTU”との通信すら止まってしまうので、テスト中はスリープ時間をあまり長くしすぎない、かつ、アクティブ時間を短くしすぎない(単位時間当たりのアクティブ比率を低くしすぎない)方が、開発が楽になります。

 

◆ 注意点2:XBeeモジュールのスリープモード設定と消費電力の関係
この波形は、抵抗(1Ω)でI-V変換した電圧を観測したもので、XBeeモジュールをサイクルスリープ(上記の設定)で動作させたときの電流変化の様子を表しています。
XBeePowerVanilla_Wave1
モジュールがアクティブになる「A」部と、スリープ動作中の「B」部が見て取れます。さらに「A」部は、3つのパートから構成されています。消費電力は波形部分の”面積”になりますので、各パートごとに計算して合計します。
 
まずは「A」部です。
XBeePowerVanilla_Wave2
XBeeモジュールはアクティブになると、”定常的に9mA消費”します。よって、波形のベース部分(「A」部全体2秒)で

  9mA × 2000mS = 18mA/s … (a)

「A-1」のコネクション部分は、”40mAで8mSのパルス”ですので、ベース部分以外を計算します。

  31mA × 8mS = 0.248mA/s … (b)

「A-2」のパケット送信部分は、”40mAで55mSのパルス”ですので、ベース部分以外を再び計算します。

  31mA × 55mS = 1.705mA/s … (c)

「A-3」のポーリングパルス部分は、”40mAで3~5mS(7割ほど5mS)のパルスがまとめて18回”ですので、ベース部分以外をまとめて計算します。

  31mA × 4.5mS × 18 = 2.52mA/s … (d)

これら(a)~(d)を合計した値、「22.473mA/s≒22.5mA/s」が「A」部の消費電力になります。
 
次に「B」部です。
XBeePowerVanilla_Wave3
XBeeモジュールは、スリープ期間中ではポーリングサイクルごとにポーリングパルスが1回生じますので、ベース(a)とパルス(b)の合計で、

  9mA × 12mS = 0.108mA/s … (a)

  31mA × 4.5mS = 0.1395mA/s … (b)

「0.2475mA/s≒0.25mA/s」が「B」部の消費電力になります。
 
これを一分単位で集計して、毎秒の平均消費電力を求めます。今回の設定では30秒ごとに2秒アクティブでポーリングは1秒おきなので、

A×2 + B×56 = 22.5 × 2 + 0.25 × 56 = 45 + 14 = 59mA/min

⇒ 平均で1mA/sec

となります。
ちなみにCR2032の標準容量は225mAhですので、上記の設定では理論上連続225時間(9日と9時間)。また、60秒に一回、アナログ1chのデータをホストに送信(2秒間アクティブ)という設定にすると約360時間(15日)稼動できる計算になります。
 
このように一つ一つの波形面積を積算することで平均消費電力は計算できますので、単位時間当たりのアクティブ率を下げることで、より長時間稼動する設定を目指すことも可能です。
※追加回路が有る場合は、消費電力はより多くなり、稼働時間は短くなります。

 

◆ 注意点3:電源電圧について
XBee Power Vanillaでは、電源の安定度は基板上の電気二重層コンデンサに依存します。よって、通常の安定化電源と異なり、出力電圧が3.0Vから大きく下がる可能性があります。XBeeモジュールの動作範囲は3.6V~2.1Vとなっているので、基板のリセット回路は2.1Vで有効になるようにして有ります。よって、そこが基板全体の動作下限となります。
 
また基板上に回路を追加した場合、3.0V~2.1Vに電源電圧が変わることを見越した部品・回路を追加する必要があります。

 

性能ギリギリまで使いこなすのはなかなか難しい基板だったりしますが、我こそはと思う方は最長時間を目指してみてください!

 

参考資料2:「XBee Power Vanilla」のコンデンサ容量はどう決まったか
商品ページ「XBee Power Vanilla(α版)」へ