Arduinoをリチウムイオン電池で動かすには

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「リチウムイオン電池でArduinoを動かしたい。でもこの組み合わせでいいのか不安。」
お客様からそんな声が聞こえてくることがあります。確かにリチウムイオン電池は扱いに気をつけないと危険ですので不安ですよね。そんなわけで、今回はArduinoをリチウムイオン電池で動かす様子を紹介します。

当社で取り扱いがあるリチウムイオン・リチウムイオンポリマー電池は次のものです。(2016年02月10日現在)
リチウムイオン電池900 mAh
リチウムイオン電池1800 mAh
リチウムイオンポリマー電池110 mAh
リチウムイオンポリマー電池400 mAh
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〇〇 mAhというのは電池の容量です。例えば900 mAhの電池では900 mAの電流を1時間流し続けられるということになります。単純計算では90 mAの電流なら10時間流し続けられるということです。気をつけて欲しいのはリチウムイオン電池は完全に放電してはいけないという点です。電池の電圧が3 Vを下回ってしまうと危険領域です。電圧が下がりすぎてしまうと、電極の素材が電解質中に溶け出してしまいます。この状態で次の充電を行うと溶け出したものが析出します。析出は元の電極におこるのではなく様々な場所におきてしまうため、それが原因でセパレータが破れショートする可能性もあります。また、過放電の状態で放置すると電解質に電池の容器が溶けて穴が開き電解質が漏れ出る危険性もあります。このような事が起こらないように常に電池の電圧を管理する必要があります。

過放電もいけませんが、過充電もしてはいけません。充電は専用の充電器を使って行う必要があります。
当社で取り扱いのある充電器の一部紹介すると次のようなものがあります。
Adafruit USB端子に直接つながるリチウムイオン電池充電器 - 充電電流100 mA
小型のリチウムイオン電池充電器(ミニUSBタイプ) - 充電電流500 mA
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充電器を選ぶ際にまず注意するポイントは充電電流です。当社で扱っているリチウムイオン電池は充電電流が最大でも1Cというものです。1Cとはバッテリーの容量に等しい電流量のことで、例えば110 mAhの容量を持つ電池には110 mA以下の電流で充電します。上記の充電器は充電電流が100 mAと500 mAです。ですので110 mAhの電池を充電するためにはAdafruit USB端子に直接つながるリチウムイオン電池充電器を使用する必要があります。

今回はリチウムイオン電池900 mAhを使います。この電池は温度が15~25℃の時のみ900 mAの電流で充電できます。温度がこれ以上高い環境では450 mA以下で充電を行ってください。充電電流の量が少ないとそれだけ充電に時間がかかります。時間はかかりますが、安全を見てAdafruit USB端子に直接つながるリチウムイオン電池充電器で充電することにしました。

次にArduinoボードの選択ですが、せっかくバッテリー駆動にするなら小型のものにします。リチウムイオン電池1セルの電圧は3.7 V(満充電するともう少し高くなります。)なので、3.3 Vで動作するArduinoボードがよさそうです。3.3V動作の小型Arduinoとなると… Arduino Pro Mini 328 3.3V 8MHzがぴったりです。
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5 V動作のマイコンを使うのであれば下記のような昇圧ボードを使用して、3.7 Vを5 Vに昇圧します。
LiPower - リチウムイオン電池昇圧ボード

このままではリチウムイオン電池とArduinoが接続できないので2ピンJST-PHコネクタ・ピッチ変換基板(スイッチ付き)を使ってブレッドボード上で配線をします。
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バッテリーの+側の線はArduino Pro Mini 328 3.3V 8MHzのVCCピンではなくRAWピンに接続します。RAWピンは基板上のレギュレータの入力ピンで、ここに3.3 V~12 Vの電圧を入力するとマイコンの電源ピンVCCに3.3 Vが供給されます。これでArduinoをリチウムイオン電池で動作させる環境が整いました。
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リチウムイオン電池は軽くて小型でエネルギー密度が高く便利ですが、間違った組み合わせ・環境で使用するととても危険ですので注意してください。