こんにちは、小室です。話題のウェアラブルトランシーバー「BONX」を作っているチケイさんに会いに行ってきました。
BONXは、野外での激しい運動中でも、ノイズも遅延もほとんどなく最大10人と同時に会話を手軽に楽しめるウェアラブルトランシーバーです。発話とそれ以外の音を自動的に判別し、ハンズフリーで会話することもできます。耳にかける本体イヤフォンを専用スマートフォンアプリに接続して使います。
BONXを作っているチケイの宮坂さんはスノーボードが大好き。BONXは、スノーボードの技が決まったその瞬間に仲間と気持ちを共有したい、話したい、繋がりたい、という宮坂さん自身のシンプルな希望を形にしたプロダクトです。
10月1日に開始したBONXのクラウドファンディングでは開始3時間で目標金額を達成し、現在では1300万円に到達しようとしています。クラウドファンディングは12月1日まで。12月上旬には出荷開始の予定です。クリスマスにプレゼントして、これを持って雪山に遊びに行くというのも楽しそう。
実は宮坂さん、スイッチサイエンスのお客様でもあるんです。スノーボードはもとより、アウトドアとはかけ離れた生活をしている私。一体どんな方なのだろうと楽しみにお話を伺いに行ってきました。
駒沢公園まで徒歩10秒。チケイさんのオフィス
チケイさんは世田谷区の駒沢公園のすぐそばのマンションの一室にあります。
チケイさんのオフィス。なんてムーディーなんだ……こんなところで開発してるなんて…ハードウェアスタートアップと聞いて、勝手にスイッチサイエンスの工作室みたいなのを想像していた私にはかなりの衝撃でした。3Dプリンターやレーザーカッターのような大型の機材もなし。ハンダゴテもなかったです。
写真はチケイさんのオフィスの玄関。スケートボードとかバスケットボールとか…実は、仕事の息抜きに駒沢公園でスケートボードをすることもあるそう。本当に、アウトドアな遊びが大好きな人達なんだなぁ…
ゼロからのスタート
オフィスがイメージと違うことはわかった。そもそもアウトドアが好きな人達だし、私とは少し違う世界で生きているのかもしれない。しかし、宮坂さんはスイッチサイエンスのお客様。恐れることはない!というわけでインタビューさせていただきました。
私:スイッチサイエンスを使ってくださってると伺いましたが、BONXにスイッチサイエンスは役立ちましたか??
宮坂さん:(とっても言いにくそうに)いや、今回の製品には直接使ってないんです…自分でハードウェアの勉強をしていたときに、スイッチサイエンスさんからも買ってました。
私:ありがとうございます!勉強されていたという話ですが、どんなものを作っていたんですか?
宮坂さん:Arduinoの本を見ながらひとつずつ進めてました。
私:!!本をひとつずつ!大学で工学部だったとか、趣味でやっていたとか、そういうわけではないのですね?!
宮坂さん:大学では文化人類学を専攻していましたし、ハードウェアもソフトウェアも全くの初心者です!(笑)ハードウェアスタートアップは、必要なスキルセットが多岐に渡ります。ハードウェアやソフトウェアの知識や技術力はもちろん、本体の設計/製造を委託している中国の企業とのコミュニケーションも必要です。また、出来上がった後のマーケティングや、お金の管理も必要。思いを共有できる、それぞれのスキルがある仲間が集まって始めるというやり方でないと難しいと感じています。
と、ここまで聞いて気になってしまった「今は仲間がたくさんいるから良いけれど…ゼロからのスタート、始める時は不安じゃなかったのかしら…」という素朴な疑問。宮坂さんは笑いながらこう答えてくれました。
宮坂さん:昔から、やりたいことはやってみればできるものだと思っているんです。なんでそう思ってるのかはわからないですが。親に愛されて育ったのかな(笑)
宮坂さん自身、三人の男の子のパパ。もちろん休日はお子さんとアウトドアスポーツを楽しんでいるのだそう。な、なんだかキラキラしている……!人生そのものが輝いている人が目の前に…!
こんなのが欲しい!からプロダクトを作る
前述したとおり、BONXは宮坂さんの「欲しい!」から生まれたプロダクトです。自分の欲しいものを作るとなると、理想と現実の狭間で妥協や諦めが出てくるものではないかと思います。しかし、「BONXにおいて諦めたことはほとんどない」と宮坂さん。
宮坂さん:アウトドアスポーツにつきものの風切音は、デュアルマイクを使うことでしっかりカットしています。ハンズフリーでの会話できる機能は、発話とそれ以外の音を自動的に判別することで実現しました。当初は歯を噛みあわせるときに出る「カチカチ」という音をスイッチにするという案も試したりしたんです。
電池の消費量と遅延対策もいろいろ試しました。電池を長持ちさせようと思うと、会話している時以外は全ての接続を切っておきたい。ただ、そうすると再接続に時間がかかり、会話に遅延が起こってしまいます。今は電池の容量を増やすことで、9時間連続使用を達成しています。
また、ひょうたん型の本体イヤフォンの形もプロトタイプを何度も作り直したんですよ。あ、ここには一つだけ妥協したところがありました!本当はひょうたん型の部分の表面を全部スイッチにしたかったんですけど、どうしても少しだけ枠が必要で…
宮坂さんのこだわりがひしひし伝わって来ました。細やかなこだわりまで実現するために、試行錯誤を乗り越えて、納得行くプロダクトに仕上げたのがBONX。多くの人が共感し、応援するのも頷けます。
BONXのその先
今行っているクラウドファンディングは、BONXを量産するための資金を集めているわけではありません。BONXはすでに量産体制に入っていて、量産するための資金調達もできています。ではなぜクラウドファンディングしているかというと、第二弾の製品を作りたいから。一体、第二弾の製品はどのようなものになるのでしょう?
宮坂さん:BONXを向上、発展させたもの、というのが一番近いと思います。ノイズを完全にゼロにしたり、装着性を向上させたり、電池の持ちを良くしたり。そのために、新しい技術にも挑戦していきたいです。どんな技術かは、内緒ですけど(笑)
僕たちは、僕達のプロダクトをひとり一台持っていて、いつでもどこでも仲間と繋がれる、という世界を目指してやっています。第二弾はその世界にもっと近づけるようなプロダクトを作りたいです。
BONXはもちろん素敵なプロダクトですが、インタビューしてみて、BONXもいいけどチケイさんを応援したいという気持ちになりました。アウトドアスポーツが好き、と聞くとなんとなくクールなイメージを持ってしまっていましたが、実際には理想を追い求める粘り強い熱い方々でした。
BONXのクラウドファンディングは12月1日まで。一度チェックしてみてください。