深圳SipeedのRISC-V採用AIエッジコンピューティングボード

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@tksです。中国には元号もGWもありませんがたくさんスタートアップとガジェットがあります。IngiegogoでSipeed MAIX : The World First RISC-V 64 AI Module が大ヒットしたことで話題の、深圳Sipeed社に行ってきました!

左が創業者でCEOのOrgmar(オーグマー)さん

SipeedはAIエッジコンピューティングのボードを作っているスタートアップです。エッジコンピューティングとは、クラウド上のAIと連携はするのだけど、処理能力の高い端末でローカルでも処理をしてしまうという考え方です。たとえば、カメラと人物認識まではローカル側で行ってしまい、特定できた情報だけをクラウド側に送る等の用途で、なので中央のAIクラウドに対して周縁のedgeという言葉が使われます。
SipeedではRISC-Vに限らずFPGA,Linuxボードなど、いくつもの製品をリリースしています。特定のCPUアーキテクチャにこだわらず、エッジコンピューティングによるAIoT(IoTにAIを組み合わせた新しいバズワード)のためのボードやWebサービスをリリースしていくとのこと。

創業者のOrgmarは中国TOP10大学に入る華中科技大学で物理学のマスターを取った科学者で、在学中からNodeMcuの創業メンバーの一人。ソフトウェアエンジニアとしてもOpenwrt,emqttなどのメンテナーを務める凄腕です。ESPの社長もメンターの一人だとか。成功した社長が次の社長を育てるエコシステムが、急速に中国でも整いつつありますね。
2018年の12月に2人で立ち上げたSipeedは、春節明けにはもう6人、そこからたった2ヶ月後の今は12人のスタッフと成都・青島・杭州・北京などに8人の協力者を抱え、来月には20名の中規模企業になります。

SipeedとMAixはこう発音します

会社の成長から話しはじめたのでビジネスサイドの人かと思って弊社のビジネスモデルやプロダクトポジションの話を始めたのですが、「お金は過去の会社もあって今入ってきてるからぜんぜん問題なくて、大事なのはとにかくAIという大きなテーマで、可能な限り安いボードを作り、みんなが算法(mobule)に取り組めること。簡単な問題に興味はない。IoTはコモディティ化しきっていて、Sipeedの目標じゃない」と一気にスイッチが入りました。ギークや研究者にたまにいる、ちょっと殴り合ってから仲良くなるタイプのようです。

彼女は英会話の経験が多くなく、僕の中国語会話もぜんぜんこういう話題に強くないので、ホワイトボードにスマホでお互い漢字調べて書いて話していたのですが、気がつくとミーティングが始まってから3時間経っていて、ホワイトボードはこんな感じ。

気がつくとミーティングが始まってから3時間たっていて、何度も消しては書きを続けたホワイトボードはこうなっていた

話したのは
-Sipeed社名の由来(スピードから)、Maixの由来はマトリックス(行列)から
-K210を使っているのはパワフルだから、でもできれば倍以上パワー欲しい、それはムーアの法則で解決するはず
-行列はAIやコンピュータビジョンだけじゃなくてコンピュータグラフィックでも大事で、それは人間→コンピュータビジョン→AI→コンピュータグラフィック→人間や
人間→センサー→AI→Robotics→人間みたいに、人とコンピュータの関わりのチェーンやエコシステムの中で居場所があるので、ぜんぶ重要ではある。ぜんぶSipeedがやるべきとも思わないけど
-技適やPSEの仕組み
-最終的にはAIモジュールのマーケットプレイスみたいなものを作りたい
-デモンストレーションとして、ロボアームの制御やSLAM,ROSみたいなのも発表するつもり

などなど、多岐にわたりました。初対面のビジネスミーティングで言語の壁を越えてこういう会話ができるのだからギークは最高ですね。

早々に以下のプロダクトのうち、無線ないものの取り扱いは始まると思います。
RISC-VベースのAIボード Maixシリーズ
AllwinnerベースのLinuxボード  Licheeシリーズ
楽路(?)とかいうチップのFPGA, Tangシリーズ

Sipeed側で技適取得次第、無線あるものも取り扱い始める予定です。
開発ボードを買う日本人は多いので、日本を視野に入れて技適取ってもらえるのはありがたいですね。

その場で包んでもらった製品。いくつかはMaker Faire Kyotoに持ち込みます