本日より不定期連載、「電子部品の行方」をはじめます。執筆は、金子茂さんです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
こんにちは。金子です。ものづくりを愛するすべての人に多彩な電子部品をお届けするスイッチサイエンス。パーツくんたちがどんな人のところで、どんなふうに活躍しているのか、探ってみよう、というのが今回の企画です。題して「電子部品の行方」。
第1回はものづくりアドバイザーとして様々な会社で技術顧問をしているベテラン・エンジニアにして、遊びゴゴロ満載のガジェットを趣味で作り続けるメイカー、小美濃芳喜さんの登場です。
「最近、こんなものを作りました。まずは見てください」
「『ツインドリル ジェットモグラ号』にイオン発生装置をつけちゃいました。タイトルは『イオンでオヤジ臭を駆逐せよ! 進撃のジェットモグラ』です」
「ツインドリル ジェットモグラ号」というのは、小美濃さんの自著「メイカーとスタートアップのための量産入門」の中で、実際に企画から量産を手がけ、商品に仕上げたガジェットです。スイッチサイエンスショップでも扱っています(2020年9月現在、在庫限りなので欲しい方はお早めに)。
「ジェットモグラ」自体は1960年代のドラマ「サンダーバード」の中の人気ビーグルでした。本来は穴を掘るドリルをタイヤに見立て構成したのがこの商品です。プログラマブルにしたかったということでmicro:bitを搭載しています。
「オヤジを見つけたらジェットモグラが追いかけ回し、『イオン砲』をぶっ放して、消臭するというコンセプトです」
イオンを作る発生装置のメインパーツは銅製の4本のリングとトランスです。数万ボルトまで昇圧すると、リング内で放電現象が起きます。そのとき、空気中の分子が帯電して負イオンなり、矢印の方向へ発射されます。
「意外にしっかり出るんですよ。リングの前に手を持っていくと、発射した瞬間、風圧を感じるほどです」
制御は2枚のmicro:bitで行います。1枚は車体に搭載。1枚は通信機能を使ってコントローラーとして手持ちします。
「電子部品のキーパーツは、micro:bitとトランスですね。イオンを発生せるため金属に電圧をかけて放電させるのは昔からよくある手法です。『コロナ放電』といいます。負イオンの脱臭効果については賛否両論でなんともいえませんが、こんな装置でオヤジ臭を消してくれたら、嫌われずにすみますね」
若干、自虐ネタも入っていますが、楽しいコンセプトです。
小美濃さんは、大人の科学の「スターリングエンジン」や「カエデドローン」など、学研で働いていた時代にたくさんの教育系ガジェットを商品化してきました。どの商品にも必ず「遊びゴゴロ」があります。
仕事として、アイデアを商品化する際は、コストや納期、安全性など何重もの壁があります。それでも最初の遊びゴゴロを失なわずに、なんとか壁を突き崩すのが小美濃流。
「初期のコンセプトを失わずに、趣味で作ったものを商品化することもよくありますよ」
こともなげにいう小美濃さんですが、趣味が仕事になるなんてステキすぎます。かくありたいものです。
これからも電子部品を使って、趣味で仕事で楽しい作品を作り続けてほしいと思います。
そんな小美濃さんに、10月3・4日に東京ビッグサイトで開かれるMFT用の福袋を頼んじゃいました。micro:bitを中心に小美濃流おもしろガジェットが作れるこだわりの電子部品をセレクトしてもらいました。会場で販売しますので、ご期待ください。