私は、技術評論社のSoftware Designという雑誌で、「はんだづけカフェなう」という連載を書いています。今月発売された2015年5月号では、IPv6 over Bluetooth Low Energyを試して紹介しています。この記事を書くに当たり、工事設計認証(いわゆる技適等)を得ていない評価ボードを使用したかったため、適法に実験が行える環境、電波暗室を借用しました。電波暗室というのは、部屋の外からの電磁波の影響を受けず、また、電磁波を部屋の外に漏らさない部屋のことです。
電波暗室は、電波を使用する機器を開発する企業の他にも、工業試験場といった施設が所有しています。当初は、工業試験場の電波暗室を使わせていただこうと思い問い合わせをしてみましたが、二ヶ月先まで予約がいっぱいとのことでした。そこで今回は、PHS電話機などを開発・販売している、株式会社エイビット様の電波暗室を借用し、実験を行わせて貰いました。
エイビット様は、PHSシールドという製品を開発し、スイッチサイエンスでも近日中に取扱をはじめる予定です。
電波暗室は、電波吸収体という素材などを貼り付けて作ります。この電波吸収体は決して安くない素材で、とあるメーカーさんが公開している「手作り電波暗室」という資料に掲載されている5m×2.4mの部屋の場合の概算で、約300万円という価格が記されています。
エイビットさんの電波暗室は、金属製の大型の箱の内側に電波吸収体が貼り付けられているという構造でした。この扉は、外側からのみ開閉できる構造でした。部屋に入り、外側から扉を閉めてもらうと、外部からの音が遮断され、電波吸収体が音をあまり反射しないために妙に静かで変な感じがしました。当然ですが、私の携帯電話も圏外になりました。
部屋の内側の壁面、6面とも電波吸収体が貼りつけられています。この暗室で使われている電波吸収体は四角錐が並んだ形状ですので、人が入って歩く部分には白い床材が電波吸収体の上に載せられています。
写真に写っている白い円筒形の台に測定対象の機器やアンテナを置き、測定を行います。今回は、ただ技適マークの付いていない無線機を試用したかっただけですので、台を借りて実際に無線通信を行って、記事を書くための確認作業をさせてもらいました。
快く電波暗室を利用させてくださった、エイビット様、ありがとうございました。