スイッチサイエンス、量子コンピュータ始めるってよ

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深センSpinQ社の卓上量子コンピュータ。1テスラぐらいの磁力で2つの量子を閉じ込め、計算している

@tks です。深圳の量子コンピュータ企業SpinQに行ってきました。

秋田先生のレポート量子コンピュータとのファーストコンタクトをしてきたをぜひ読みましょう

デスクトップで量子コンピュータが動く!

深圳のSpinQ社は、世界で最初のデスクトップ量子コンピュータを商品化し、販売しています。NMRという、磁場と電磁波を加えて原子核の「スピン」の量子状態を操作・計測する方式を用いて量子計算を行う方式で、2020年に販売開始したGeminiと2021年末に販売を始めたGemini-Miniでは2つの量子ビット(Qubit)を操作します。

Gemini-miniの内部

かなり強い永久磁石2つの間に、液体の入ったチェンバーがあり、その液体に電磁波を当て、量子状態を計測することで量子計算を行います。

仕組みについては、一緒に行った秋田先生のレポートをぜひ御覧ください。

眼の前で量子計算が行われる衝撃

2つの量子ビットでは2*2、つまり4通りの計算しかできないので、実用性はない(ほかのやり方で計算したほうがマシ)のですが、Geminiシリーズはホンモノの量子コンピュータなので、この4通りを量子の重ね合わせで計算します。観測すると量子状態の重ね合わせが解けて結果が確定するので、その演算を統計的に有意な差が出るまで多数回行って、答えを出します。

グローバーのアルゴリズムを実行したところ。

上の計算結果はグローバーのアルゴリズムを実行したところで、11が正解なのですが00,10にも数%ずつ入っています。今のGeminiシリーズでは2Qubitの演算を10回程度行うのが精一杯なのですが、量子コンピュータらしい計算結果が目の前で出るのは衝撃的です。

デスクトップサイズのGemini-miniは7000USD,課題は技適(TELEC)と電源

2020年に販売開始したGeminiは40,000USD(東大が購入したらしい)、新型で3QubitのTriangulum(55,000USD)はUSB接続なので、輸入について法規的な問題はなさそうです。

ですが、Geminiと同じ2Qubitで、大幅に小型化し、本体の画面で演算結果をそのまま確認できるGemini-Miniは7,000USDなので、ぜひGemini-miniを輸入したいところです。

残念ながら、Gemini-miniの無線機能はTELECを取得していません。また、電子レンジやMRIのような仕組みなので、かなり大電流のACアダプタを手配する必要があります。(現在のアダプタはPSEなし)それでも、目の前で量子計算が実行できるのは魅力的で、今SpinQ社と輸入に向けた打ち合わせが始まっています。

東工大出身のメンバーはもちろんスイッチサイエンスを知っていて、社内で触れ回ってくれました

訪問中のツイートや、秋田先生のレポートには多くのreplyが寄せられ、SpinQのみなさんも日本に期待しています。

量子コンピュータの動作や仕組み興味津々の福本/秋田/高須
「この分野は素人なのですが…」SpinQのメンバーで日本語ができる東工大出身者がわざわざ同席してくれた

今回は福本博士、秋田教授と僕の3人で行ったことで、専門的な質問ができたこと、日本の教育者たちの反応が予測できたことも、SpinQみなさんの心をつかみました。
SpinQの面々もテンションが上って、いまTELEC他のコンサルなど、具体的なやり取りが始まっています。

SpinQでは超電導方式の量子コンピュータも開発しています

SpinQではハイエンド量子コンピュータも研究開発しています。年末までに20Qubit目標と、Googleの53Qubitには及びませんが、スタートアップとしてこちらも世界最先端を目指しています。10ミリケルビンぐらい、ほぼ絶対零度の極低温で超電導状態を作って計算するもので、「こちらも日本で販売できるならぜひ」と言われていますが、値段は聴きませんでした。(普通に億は超えるでしょう。問い合わせあれば対応します。)

科学を灯そう。日本に、デスクトップ量子コンピュータを持ってきたい

秋田先生のレポート量子コンピュータとのファーストコンタクトをしてきたをぜひ読みましょう。

2Qubitでは4択の問題しか解けないので、どうやっても普通のコンピュータのほうが速いです。SpinQの人もそこは真っ先に「役立てるものではなく、教育用で、量子計算を実際にやってもらうことが大事」と紹介していました。

50Qubitぐらいある量子コンピュータだと、いくつかの計算は普通のコンピュータよりも圧倒的に早く解くことができます。ただしそれは「量子コンピュータが得意で、普通のコンピュータはとても苦手なアルゴリズム」に限ります。
「量子コンピュータはどんな問題でも普通のコンピュータより早く解ける」というのは、よくある大きな間違いです。(量子コンピュータについてちゃんと理解している人は、たいてい量子コンピュータの開発者/研究者なので、余計に間違いの修正がされづらい)

そういう問題は今のところ24種類ほどしか見つかっておらず、役に立ちそうなのはRSA暗号解析/素因数分解ぐらいのようです。

つまり、量子コンピュータをどう実現するかと同じぐらい、「量子コンピュータの役目をみつけ、どうやって役立てるか」というのは重要なテーマなのだと思います。メイカーの出番です。オモチャと馬鹿にされるようなものが、何度も世の中を変えてきました。

いくつかの学校に量子コンピュータが置かれたり、M5StackやmyCobotのように、たくさん売れたことで秋葉原の店頭に量子コンピュータが置かれるようになったら、それは未来だと思うのです。
そして「壊れた量子コンピュータを分解してみた」「修理してみた」「作ってみた」みたいなことが、これからの未来を決めていくと思うのです。

なんとか日本にデスクトップの量子コンピュータを持ってきたい。今後の進捗にご期待ください。

Light Up Your Science −科学を灯そう−

ブログを見たSpinQが、わざわざブログ内容を訂正してくれた

僕のブログはミーティング時に商談しながら聞いた話をもとに一方的に書いたものですが、見たSpinQのスタッフが、「高須は30Qbitと書いてくれたけど、今の弊社の実力は年末までに20Qbitぐらい」という訂正をしてくれました。
こういう控えめな訂正をしてくれる会社は信用したくなります。